家族信託の事例

case 02

妻が相続した後の財産の行方

妻が相続した後の財産の行方

私(Xさん)たち夫婦に子はなく、先祖代々受け継いできた土地建物に二人で住んでいます。
私が先に死んだ場合は、妻には、この土地建物で余生を過ごして欲しいと思っていますが、妻の死後は、土地建物を妻側の親族や国庫ではなく、私側の親族である甥に受け継いでもらいたいのです

障害を持つ息子の財産管理

信託でなければXさんの希望を実現しにくい理由

Xさんが遺言を残せば、希望を実現できる?

Xさんが自身の死後、上記の不動産の帰属問題をコントロールする方法としては、まず、遺言を残す方法が考えられます。

しかし、遺言で実現できるのは、「Xの財産を妻に相続させる」というところまでです。「妻の死後、残った不動産を甥Bに帰属させる」ところまでは指定できません。妻が遺言を残さずに死亡すると、先祖代々の不動産は妻側の親族か、それがいなければ国庫に帰属することになります。

妻が不動産を甥のために残しておく保証もない

Xさんが亡くなり、先祖代々の不動産が妻に相続されれば、不動産は妻の所有物になりますので、妻がどのように処分しても自由だ、ということです。
妻が「夫Xの甥に全財産を相続させる」という遺言を作成してくれれば、Xさんの要望は実現します。
しかし、妻がXさんの意に反する遺言を作成する可能性もある以上、この方法によって、Xさんの要望を実現するのは困難です。

最初から甥に不動産を相続させるのも、リスクがあります。
では、初めから、甥に不動産を相続させる方法はどうでしょうか。
遺言の中で、夫Xが甥に対して、「妻に不動産を利用させること」という条件を付けたうえで、不動産を甥に相続させる方法です(負担付遺贈)。負担付遺贈を行えば、妻が生きている間は、Xの財産を妻が使用することができ、妻が亡くなったとき、甥に財産が帰属することになります。
しかしこの方法でも、甥がこの遺言に従わず、負担を履行しない可能性はあり、不確実です。

妻が不動産を甥のために残しておく保証もない

信託契約でXさんの希望を叶える

このような場合、信頼できる人物(たとえば、兄であるAさん)との間で信託契約を締結し、Xさんの希望を叶えることが可能です。
具体的には、Xさんが委託者となり、受託者である兄Aさんに、先祖代々受け継いだ不動産の所有権を譲渡します。
Xさん存命中は、Xさん自身を受益者として、受託者であるAさんに、不動産や賃料収入等の管理を任せます(自益信託)。
Xさんが死亡した後、受託者であるAさんは、妻を受益者として、妻を自宅不動産に居住させつつ、賃貸用不動産からの賃料収入を妻に渡します。
妻が死亡した後は、不動産の所有権を甥(権利帰属者)に渡します。

信託契約でXさんの希望を叶える