家族信託の事例

case 02

障害を持つ息子の財産管理

障害を持つ息子の財産管理

今年74歳になる私(Xさん)は、妻に先立たれた後、障害をもつ息子と二人で暮らしています。
私の死後、財産を相続した息子がきちんと財産を管理できるか不安です。できれば、信頼できる甥に、息子のために財産を管理して欲しいのです。

障害を持つ息子の財産管理

信託でなければXさんの希望を実現しにくい理由

成年後見制度は利用できないケースがある

このようなケースの場合、障害のある息子について成年後見制度を利用することが考えられます。
裁判所に成年後見の申立てを行い、息子に成年後見人がつけば、息子がXさんの財産を相続した後、息子に代わって成年後見人が財産管理を行うことになります。

しかし、成年後見制度が利用できるのは、息子の判断能力が失われた場合のみです。
息子の障害が判断能力とは関係のない障害の場合、あるいは、判断能力が低下する障害でも程度が重度でなければ、成年後見制度は利用できないことになります。

さらに、成年後見人は裁判所が選任するのですが、弁護士などの専門家が選任されることが多いので、甥に任せたいという要望を叶えるのが難しい場合があります。

信託でなければXさんの希望を実現しにくい理由

最終的な財産の帰属までコントロールするのは困難

また、Xさんの財産を相続した息子が死亡したとき、息子に相続人がいなければ、残った財産は国庫に帰属することになってしまいます。
息子が、遺言を残していれば別ですが、判断能力に問題がある場合、それは期待できません。
信託を利用すれば、息子が死亡した時点で残っていた財産を誰に帰属させるか指定することができます。

任意後見契約にも、不安要素がある

その他、任意後見契約を締結するという方法もあります。息子が甥と任意後見契約を締結し、息子の判断能力がなくなった場合、以降の財産管理を甥が行う、というものです。
しかし、この場合も、将来的に息子の判断能力がなくなるという前提ですから、上記の成年後見と同様に、使用できるケースが限定されますし、息子の死亡後、財産が国庫に帰属してしまうリスクがあります。

また、甥が後見人になって以降、裁判所により、後見人の地位が解任される可能性があり、甥にまかせたいというXさんの希望が、最後まで維持される保証はありません。

信託契約でXさんの希望を叶える

このようなケースの場合、Xさんが甥との間で信託契約を締結すれば、甥に、Xさん死後の息子の財産管理を任せつつ、息子が死亡した後の財産の帰属についても、Xさんの要望を反映させることができます。

具体的には、委託者Xさんが、自宅と賃貸不動産を受託者である甥に信託し、所有権を移転します。
Xさんの存命中は、甥はXさんのために、これらの財産を管理します(当初の受益者はXさん。)(自益信託)。
Xさんが死亡した後は、甥は息子(第二次受益者)のために、財産管理を行うことになります(他益信託)。

息子の死亡により信託は終了しますが、その際、残った財産の帰属をXさんの親族等に分配する旨(権利帰属者)、定めることが可能です。

信託契約でXさんの希望を叶える