他人に対し、一定の目的の下で、自己の財産の管理や処分をさせる際に使われる
例えば、近年では「投資信託」という言葉をよく見聞きしますが、これは投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめて、運用の専門家が株式や債券等に投資・運用するもので、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みになっています。 つまり、投資家からすれば、資金の増加等を目的として、自分の財産の管理処分を運用の専門家に管理・処分させているという意味で信託の一種ということになります。この信託の仕組みを、後見制度や遺言制度の代わりに、あるいはそれと併せて使用することで、自身あるいはご家族が亡くなった際、被相続人(お亡くなりになった方)ご本人の希望にかなった財産管理や承継をすることが可能になるのです。
後見制度や相続について規定されている法律は民法や、任意後見契約に関する法律等があります。 これらの法律があるにもかかわらず、信託で遺言や後見を行うメリットはあるのでしょうか。 信託のメリット・デメリットを考えてみましょう。
成年後見制度は、毎年家庭裁判所へ報告する義務があったり、資産の積極的な活用等をしたりすることが困難です。 また、成年後見人は、本人(成年被後見人)の判断能力が衰えるまでは財産の管理ができません。
これに対し、信託では成年被後見人の判断能力が衰える前の元気なうちから、自分の希望する人に財産の管理を任せることができるので、後に判断能力を失った場合でも、本人の意向に沿ったスムーズな財産管理を行うことができます。
信託は遺言の代わりにもなります。 遺言書は、作成方法が厳格であるため、作成が億劫になってしまうようです。 また、遺言はあくまでも自分の財産の処分を定めることしかできないので、被相続人の本当の意味での要望を叶えることができないことがよくあります。 すなわち、遺言は自分の財産を誰に相続させるか、までは指定できても、その相続させた者が亡くなった後はどうするかまでは決めることができないのです。
しかし、信託を使えば、遺言ほど厳格な作成方法ではありませんし、いわゆる二次相続を指定することができるので、自己の財産を相続させた者が亡くなった後の財産処分についても指定することができるのです。 この点についての詳細は事例でご説明いたします。
信託は基本的に財産管理についての規定なので、身上監護について規定することもできますが、法定代理人である成年後見人しかできない身上監護もあります。 そういった場合には、信託だけに頼らず、信託制度と既存の成年後見制度とを併用することが必要といえます。
信託は節税を目的とするものではないので、信託を行ったからといって、節税対策をすることはできません。
信託は、信じて委託することなので、財産の管理処分を他人に任せることになるのですが、任せた者の財産の管理処分がずさんだと、それがきっかけでトラブルになってしまう可能性があります。 だからこそ、真に信頼のできる人物を選任しないといけないですし、そのひとの監督をどのように進めていくのかを含め、弁護士に相談をする必要性が高いといえます。
柔軟に財産管理を行える
遺言制度や後見制度の代わりにあるいは、それと併用して、柔軟に財産の管理処分を有効に行うことができます。自身のあるいはご家族の財産の管理処分にお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。 あなたのご希望に沿う解決をご提案致します。
委託者は、信託によって実現しようとする目的(信託目的)のために、自分の信託財産を受託者に預けます。 委託者は、信託目的のとおりに信託財産の管理処分がなされるよう、受託者に対し、様々な監督権限を持っています。
委託者から預けられた信託財産を管理・処分するなどの義務を負う者のことです。 受託者は、委託者が信託契約によって定めた信託目的に従って、信託財産の管理処分を行います。 受託者による権利の逸脱濫用を防ぐために、善管注意義務や忠実義務等多くの法的義務が課されています。
受託者から信託財産にかかる給付を受ける権利を有する者のことです。信託はこの受益者に対して、利益を与えることを目的にして設定されています。 したがって、受託者を監視・監督する第一次的な地位にいるのは、この受益者です。
信託監督人は、受益者が年少者や、知的障害者の場合など、自身でしっかりと受託者を監督することに不安がある場合に、受益者のために、受託者の信託事務の処理を監督する権限を有します。
信託管理人と同じく、受益者に代わり、受託者の信託事務を監督する立場です。 ただ、受益者代理人は信託監督人と比べ、監督権限の範囲が広くなっています。信託契約締結時、既に受益者に重度の知的障害があるなど、受益者による受託者の監督がおおよそ期待できないケースでは、受益者代理人の選任をお勧めします。