家族信託の事例

case 01

遺言書を書いてほしいと言いにくい

遺言書を書いてほしいと言いにくい

Aさんの現在の状況

私(X)の父は多くの財産を所有しているのですが、高齢になり、最近は、判断能力が低下してきているようです。
残された親族間で相続の争いを避けるためにも、今のうちに、私を含む兄弟がそれぞれ、父の財産をどのように相続するのか、遺言を書いてもらって、決めてほしいと思っています。
しかし、気難しい父に「遺言を書いてくれ」なんていうと、「早く死ねということか!?」と怒られそうで、言いにくいです。

Aさんの現在の状況

遺言では実現しにくい要望も、信託なら実現できる場合がある

悩み01 / 遺言は、書き直される可能性や、使いにくい点がある

遺言を書いてほしいけども、そのことを言いにくい、という悩みはよくあります。
もし父親が遺言を書いてくれたとしても、遺言は作成日時の新しいものが優先されますので、父親の気が変わり、Xさん達の知らないところで、遺言を別の内容に書きなおされてしまう可能性もあります。
さらに、父親の存命中は、父親が自由に財産を処分できますから、気の変った父親が財産を処分するなどすれば、せっかく書いてもらった遺言の内容を実現できなくなるリスクもあります。

このように、実際には、遺言には使いにくい点があります。

遺言は、書き直される可能性や、使いにくい点がある

悩み02 / 生前贈与という手もありますが、税金が高くなり、不利

たとえば、父親の生前、Xさん達に財産を贈与してしまう手もあります(生前贈与)。
ただ、贈与契約締結時に、Xさん達には財産取得にかかわる贈与税が課税されます。相続により財産を取得した場合には、相続税が課税されますが、一般的に、相続税よりも贈与税のほうが高額になりますので、生前贈与の方法は、税金の計算上、不利になります。

信託契約で悩みを解決する

遺言代用信託を活用する

このようなケースの場合、遺言の中身として検討していたことを、信託契約という形にすることで、悩みを解消することが可能です。
具体的には、父親(委託者)が、Xさん(受託者)に対し、父親の存命中は、自身のために財産を管理することをお願いして(信託目的)、Xさんに財産の所有権を移転させます。父親が死亡すれば、信託は終了し、その時点で残った財産がそのままXさん達(権利帰属者)に残るようにしておきます。

遺言代用信託を活用する

信託の変更を制限すれば、撤回不能の遺言としても活用できる

信託契約が締結された場合、契約中に特に定めがなければ、委託者である父親は、信託の内容を変更することができます(「信託の変更」)(信託法149条3項)。契約の中で、委託者による「信託の変更」を制限する旨定めれば、契約が撤回されることはなくなります。
遺言の場合、撤回不能にすることはできません。でも信託ならできるのです。
このような信託契約の場合、Xさん達に課税されるタイミングは、信託終了時、Xさん達が残余財産を取得した時で、計算方法は相続税と同様に計算されますから、生前贈与の場合と比べて、税金の計算上有利になります。